スレッド間で共有されるリソースに対して複数のスレッドから同時に処理を行うと、プログラムの整合性が壊れてしまいます。これを防ぐために共有リソースに対する処理を適切に制御してプログラムの整合性を保つことを
"排他制御" といいます。
ミューテックスと呼ばれる種類のクラスによって共有リソースへアクセスできるスレッドを制限して、排他制御を実現できます。
std::lock_guard クラスは、リソースの排他的なロックをシンプルに管理するためのクラスです。テンプレート引数には、 std::mutex クラスのような、 lock() / unlock() メンバ関数を持つクラスを指定できます。
コンストラクタの第一引数には、ミューテックスオブジェクトの参照を渡します。コンストラクタ内では、受け取ったオブジェクトに対して、 lock() メンバ関数を呼び出してロックを取得します。
すでにロックが取得されているオブジェクトを std::lock_guard クラスで管理したい場合は、コンストラクタの第2仮引数に std::adopt_lock 変数を渡して、 lock() メンバ関数を呼び出さないように指定できます。
デストラクタが呼び出されると、管理しているオブジェクトの unlock() メンバ関数を呼び出し、ロックを解除します。
std::lock_guard クラスはコピー可能ではありません。
[概要]
mutex と lock_guard を使って、シンプルな排他処理を行うプログラムを作成してみます。
自動的に unlock してくれるので、多くの場合でこの方法が最適です。
[環境]
| コンパイラ : | g++ (Ubuntu 13.3.0-6ubuntu2~24.04), | 13.3.0 |
| OS: | Ubuntu 24.04 (WSL), | |
[プログラムソース] mutex_sample_01.cpp
#include <iostream> // cout #include <map> // map #include <string> // string #include <chrono> // chrono::seconds #include <thread> // thread, join #include <mutex> // mutex, lock_guard std::map<std::string, std::string> g_pages; std::mutex g_pages_mutex; void save_page(const std::string& url) { // ページの読み込みに時間がかかるのをシミュレートしています。 std::this_thread::sleep_for(std::chrono::seconds(2)); std::string result = "fake content"; // ミューテックスをロックして g_pages にアクセスします。 std::lock_guard<std::mutex> guard(g_pages_mutex); g_pages[url] = result; } int main() { std::thread t1(save_page, "http://foo"); std::thread t2(save_page, "http://bar"); t1.join(); t2.join(); // スレッドが join 済みであるため、ロックなしで g_pages にアクセスしても安全です。 for (const auto& pair : g_pages) { std::cout << pair.first << " => " << pair.second << '\n'; } }
ビルド方法(g++):
g++ -std=c++17 -Wall -Wextra -Wpedantic -pthread -O2 mutex_sample_01.cpp -o mutex_sample_01.out
| オプション | 説明 |
|---|---|
| -std=c++17 | C++17 標準でコンパイルします。言語機能(構文・ライブラリ仕様)が C++17 準拠になります。 |
| -Wall | 一般的な警告群を有効にします。コード品質の初期チェックに有用です。 |
| -Wextra | -Wall に含まれない追加の警告を有効にします。未使用パラメータなどを検出します。 |
| -Wpedantic | 規格に厳格に従っていない拡張や非標準的記法を警告します。移植性を高めたい場合に有効です。 |
| -pthread | POSIX threads のサポートを有効にし、スレッド関連のライブラリをリンクします。単に -lpthread をリンクするだけでなく、コンパイル時にスレッド対応(スレッドセーフな定義など)を有効にするフラグです。スレッド/ミューテックスなどを使うプログラムでは必須に近いオプションです(Linux)。 |
| -O2 | 最適化レベル 2 を指定します。実行速度向上のための最適化を行うが、"-O3" よりは穏やかで安定的な設定です。デバッグ時は "-g -O0" を推奨します。 |
実行結果:
$ ./mutex_sample_01.out http://bar => fake content http://foo => fake content $
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